ハレハレ本舗 土佐楮 手漉き和紙
紙漉き職人 ハレハレ本舗代表。東京出身。
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高知県幡多郡黒潮町、海からほど近い集落に工房兼住居をかまえる。
『古くからの和紙製法は本当に「お天気次第」なので、たくさんの陽の恵みを受けられますように、という願いを込めました。「ハレハレ」という言葉は、ハワイでは「聖なる場所」という意味もあるようです。太平洋の海鳴りが聴こえるこの場所で、人と大地に恵まれて生きることに感謝する日々です。』
中嶋さんのご自宅でもある黒潮町の工房にお邪魔したのは、5月中ごろの、カラっと晴れた気持ちのよい日でした。
ちょっとわかりにくい道だからと、中嶋さんのご友達である海工房の西熊さんが案内してくださることになり、お陰様で迷うことなくハレハレ本舗さんの工房に到着することができました。
道幅の狭い坂を登りきった、とても見晴らしの良い場所にハレハレ本舗さんの工房はありました。耳を澄ませば海の潮の満ち引きが聴こえてきます。
古民家の古い良さはそのままに、暮らしよい住まいに工夫されている、そんな印象を受けました。
『ちょうど手をやすめて、お昼にしようとしていたところだから、何にもないけど一緒にどう?』 中嶋さんのお言葉に甘えて、挨拶もそこそこにお昼ごはんをご一緒させていただきました。
工房をくまなく包むのは、手漉き和紙特有の原料の薫り。深呼吸すると、自然と気分が落ち着いてきます。きさくな中嶋さんのお人柄に安心しつつ、食後の珈琲をいただきながらハレハレ本舗さんについてお話を伺いました。
『学生時代絵を描いていたので、その頃から「紙」には特別な思いがありました。紙漉き職人は自分の天職だと思っています。
ある時期に、「自分の作ったものは、時間が経つと結局ゴミにしかならないのではないか」と感じ、悩んだことがあるんです。
「本物って何だろう。」そんな思いを持ちながら、30才の時、一人旅をしました。
たどり着いた沖縄で、昔ながらの製法で紙を漉いているおばあちゃんに出会い、その存在は鮮烈な記憶として残り、私に東京を離れて生きる決心をさせました。
その後、昔ながらの製法を大事にされている紙漉き職人のおじいさんに弟子入りが決まり、以前から住んでみたいと思っていた高知県の大方に移住しました。
それから精進の日々を経て5年前に独立し、「紙一本」となった今、「真に心のこもったもの、心が満たされるものを作りたい。」という長年の思いを大切にしながら、もの作りをしています。』
出来上がった紙の一枚一枚を、手にとって見せていただきました。
それぞれに中嶋さんの「思い」と「個性」が感じられます。
美しさと素朴さが同居する、独特の感性がある風合いです。
工房では、楮の繊維をこん棒で「たたく」行程を見せていただきました。 手漉き和紙の製作はおおまかに、原料を水につける→煮る→水洗い→さらし→ちり取り→たたく→こぶり…そしてようやく紙漉きとなり、→脱水→乾燥→断裁 という工程をたどります。
一枚の紙を仕上げるのは、気力と体力がいる仕事です。
屋外には天日用の板に、漉きあがった紙が一枚一枚干してありました。機械での乾燥が主流の今、昔ながらの工程にこだわる板干しは今では珍しい光景です。
天日で干すと、じっくり時間をかけて均一に乾くので仕上がりが美しく、紫外線による自然漂白で年月がたっても変色しにくいという利点があるのだそうです。
『本当に手間がかかる、好きでないとできない仕事ですが、
自分の天職に出会えて本当に幸せだと感じています。
都会にいたころ、モノはあふれていたけれど、本当にホッとするものに
出会えることは数少く、私も含めてある意味で「飢えている」人が多いと感じていました。
高知に住んで思うのは、確かにモノは少ないけれど、自然に囲まれた生活の中で「満たされて」いる人が多いということです。
年に一度、モノ作りの刺激を受けることを兼ねて東京で展覧会を開くのですが、そこで
ずっと高知にいてある意味「豊かボケ」してきている自分に気がつきます。』
その後、紙の原料である楮を栽培されている畑に案内してくださいました。
山あいの細い道をぐんぐん行った先の一帯に、川のせせらぎを囲むようにたくさんの楮が育っていました。
『昔、土佐は全国でも有数の品質の良い「楮」が作られる地でした。
外国からの安い原料の輸入が主流となり、廃れてしまった楮畑を、
今、自分の手で復活させたい。
そう決心したものの、一筋縄ではいかない問題がたくさんありました。
楮は土の栄養をたくさん必要とするので「土が荒れる」とされ、
なかなか貸してくれる場所が見つからないのです。
それでもきっと見つかるはずだと探しまわって、出会ったのが今の畑です。環境としては理想的な場所で、元気な楮が育っています。』
薬品を一切使わずに、自然の力で育つ楮の木。
若い緑色の葉をたくさんつけていました。
大量消費、安ければ良いという価値観の流れが変わり
モノに対する価値観が見直される時期が来たことを、
中嶋さんは心から嬉しく思っているそうです。
古典的な和紙文化を残すことに尽力され、「真に心のこもったもの、心が満たされるものを作りたい」という中嶋さんの思いは、完成した「作品」を手に取った人に、きっと伝わるだろうと確信しつつ、工房をあとにしました。
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満月をテーマに、ヘンプ(麻)の繊維を漉き込んだ手漉き和紙のシェード。
骨組みは品質のよい中土佐の黒竹を使用し、
台の部分は高知県産の杉板を京都の柿渋染めしています。
結婚式などの引き出物にもよくご注文いただくお品です。
折りたたんだコンパクトな状態での包装となります。
天然行燈 満月 Mサイズ
税込 12,000円 (税別 11,112円)
サイズ 16cm×16cm 高さ38cm
※すべて手仕上げにつき、サイズに若干の誤差はございます。
素材 楮 ヘンプ(麻) 杉 黒竹 柿渋
納期:約1〜3週間の予定となります。
天然行燈 満月 LLサイズ
税込 20,000円 (税別 18,519円)
サイズ 27cm×27cm 高さ65cm
※すべて手仕上げにつき、サイズに若干の誤差はございます。
素材 楮 ヘンプ(麻) 杉 黒竹 柿渋
納期:約1〜3週間の予定となります。
※和紙は繊細な素材の為、やさしくお取り扱いください。
※必ず人(大人の方)がいる状態でご使用ください。
【麻の紙について ハレハレ本舗】
ハレハレ本舗では、楮を栽培して紙にする傍ら、大麻(ヘンプ)の紙を漉き始めています。
日本最古の紙は大麻の紙であるとされており、正倉院にも納められています。
しかし、原料処理が大変なことから、楮の移入に伴い、姿を消しました。
現在「麻紙」と称して出回ってるのは「苧麻」であり、いわゆる麻とは全く違う植物です。
大麻は日本の文化の大きな軸を成す農作物であり、
神社仏閣では今でも
大切な神事事には欠かせない、日本人の精神のよりどころでもありました。
今、枯渇するであろう石油製品に変わるバイオマス資源として麻は再び見いだされてきています。
ハレハレ本舗では、バイオマスの大事な観点「多段階活用(ひとつの植物からいろいろに、無駄なく使い切る)」という発想で
「紙」は使い切った最後の段階で紙になることに注目しています。
栽培免許の収得が難しく、現在はドイツ産か中国産の精麻を使用していますが、
ゆくゆくは、楮同様、自家栽培の麻で紙を漉くことを目標にしています。
現在、日本で「大麻和紙」を漉くのは3人位ではないかと思われます。
ハレハレ本舗以外では、代々続いてる国産の麻の栽培地の紙漉さんが2名おられます。
木綿が入る前、楮は織物としても使われ、
天皇家への奉納として楮の布は白妙、
麻の布は青妙としてお供えされていたそうです。今は楮の白妙は絹に、青妙は今でも大麻です。
こういう観点から、ハレハレ本舗では「大麻和紙」に力を入れています。
農作物として、肥料、除草剤の必要のない、中山間地域の過疎の集落で
お年寄りでも楽に作ることができる点、そして健康、医療の面からも優れた麻。
高知では一昨年まで代々作られていた文化が残っています。
その再生に力を入れていきたいと思います。
ハレハレ本舗 中嶋久実子
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